観光業界は今、大きな転換期を迎えています。これからの観光DX(デジタルトランスフォーメーション)について、観光系スタートアップとして業界を牽引しているWAmazing株式会社 代表 加藤史子さん、株式会社SQUEEZE 代表 舘林真一さんと、キャナルベンチャーズ株式会社 駒木敬がディスカッションしました。

スマートホテル事業とソリューション事業の両輪でDXを実現

駒木)観光業はこれからの日本経済を牽引する重要な経済成長エンジンですが、新型コロナウイルスの影響で非常に厳しい状況にあります。一方、もともと労働集約産業といわれてきたこの業界において、デジタルによる再構築が一気に進むタイミングであるともいえます。

そこで本日はポストコロナ時代における新たな観光ビジネスのあり方について語り合いたいと思います。舘林さん、今回の対談会場、Minn上野はオープンの時から気に入っているホテルで、これまで何度も利用させていただいているんです。このホテルも含め、会社紹介をお願いできますでしょうか?

舘林)SQUEEZEは、XTech(*オペレーションとテクノロジーの掛け合わせ)により宿泊業界のデジタルトランスフォーメーションを目指しています。スマートホテルの運営をしながら、運営に必要なオペレーションシステム(PMS)を自社開発し、SaaSとして提供するソリューション事業も行っています。SaaSサービスは累計3700施設に導入されています。

スマートホテルでは、チェックインからチェックアウトまでをシームレスにして、利用するお客様に、滑らかな滞在をしていただけるオペレーションを目指しています。

画像1: スマートホテル事業とソリューション事業の両輪でDXを実現

駒木)関西のホテルではフロントを無人化しているホテルがあると聞いたのですが?

舘林)現在12棟のスマートホテルを経営していますが、Minn北梅田など半分はフロントが無人で、備え付けのタブレットに予約コードを入れるだけでチェックインできるようにしてあります。

最近では、不動産デベロッパーから、施工前から相談いただいて、企画、運営、ソフトウェア開発の3つの軸で支援させていただくことも多くなってきました。これまで蓄積してきたXTechのノウハウにより、単に運用業務効率化だけでなく、利用客目線でどのようなハードウェアが求められるのかもわかるようになってきました。

駒木)これからの不動産デベロッパーは、自社だけで設計していくよりも、SQUEEZEさんと一緒に考えていったほうがよさそうですね。

舘林)そうですね。Airbnbが日本に進出してきたころに、SQUEEZEは民泊からスタートしましたが、その頃から空きビルや空き家を活用してどう収益化するかという相談が多かったんです。その後事業展開していく中で、今のようなPMSやフロント無人化・省力化、清掃アウトソーシング、自動チェックインといった当社の強みがどんどんできてきて、結果不動産デベロッパーやホテル運営をされている方々から、狭小地の活用やホテルの省人化オペレーションについても相談されるようになってきたんです。

駒木)ここ(Minn上野)も敷地面積全体が広いとはいえないと思うのですが、客室自体は広いし、部屋数も多い。やはり省人化を突き詰めてバックヤード極小化ができているのは大きいのですか?

舘林)Minn上野は52室、最大収容人数330人なので、12棟の中では一番大きいんです。通常のフロントは昼間3〜4名、夜間2名というオペレーションですが、ここはほぼワンオペです。QRコードからモバイルでチェックインできる事前チェックインの仕組みがあるので、10組などでも同様に対応できて、フロントで並んで待つことは一切なくスムーズにチェックインしていただけます。

駒木)今回、事前チェックインをやってみました。スマホで簡単にチェックインできて確かに便利ですね。今まではホテルのチェックインは面倒って思っていましたけど、今後はこの仕組みが当たり前となりそうですね。

画像2: スマートホテル事業とソリューション事業の両輪でDXを実現

訪日外国人旅行者と日本各地をつなぐサービス「WAmazing」を展開

駒木)加藤さんからも会社紹介をお願いします。

加藤)WAmazingは訪日外国人向けの観光プラットホームサービスを展開しているOTA(Online Travel Agent)です。日本に来る外国人に特化していること、5つの消費領域(宿泊、飲食、交通、買い物、アクティビティ)をワンストップで提供すること、この2つが特徴です。外資系も含めた他のOTAよりも、すべての領域での充実度、きめ細かさで勝負しようと考えています。基本的にはスマホ経由のサイトもしくはアプリで、日本側の事業者と海外からやってくる個人旅行者をマッチングしています。

駒木)WAmazingならではのサービスや情報はどんなものがありますか?

加藤)免税ECサービスはユニークだと思います。日本で人気なお菓子や化粧品を消費税免税価格でネットで購入し、帰国時に空港で商品を受け取れるサービスです。中国本土向けには、WeChatミニプログラム「玩尽日本免税站」として展開しています。

また訪日外国人旅行者は、年々地方へ足を伸ばす人が増えています。そこでWAmazingは地方を強化しています。2大人気は温泉とスキー。この時季、関西はカニ一色となり、もともと関西の方の冬の楽しみはカニと温泉を楽しむ旅でした。ほとんどのホテルや旅館では、カニしゃぶか焼きガニかなど選べるのですが、海外のOTAでは部屋ごとにそんな細かい夕食の選択はできないんです。WAmazingでは、部屋ごとの夕食の選択はもちろんのこと、その他細かいところまでのセレクトができます。
また、スキーに関しては、日本全国のスキー場の7割と契約して、オンラインでリフト券、レンタル用品、外国語対応のレッスンなどを販売しています。この分野でのニッチトップになっています。

画像1: 訪日外国人旅行者と日本各地をつなぐサービス「WAmazing」を展開

駒木)細かいところまで気が利いているっていいですね。結果的にこれが顧客の体験価値を高めることにつながっている。集客は無料のSIMカードが中心なんですか?

加藤)無料SIMを空港で配布して集客していますが、無料SIMは多くの方が訪日直前に準備をするためリードタイムが短いのが弱点です。スキーのように訪日の半年前ぐらいから考え始めるリードタイムが長い商材に関しては、オウンドメディア上でオリジナルの観光記事を2300本くらい、多言語で発信しています。台湾Googleや香港Googleで「日本 滑雪(*中国語でスキーの意味)」と検索すると、トップテンのうち4つはWAmazingの記事がランクインしているんですよ。

駒木)なるほど、オウンドメディアの強さがWAmazingの強さにつながっていくんですね。海外OTAと戦っていくにはいかに独自の高い集客力を持てる仕組みを作ることができるか、あらためてオウンドメディアによる集客の重要性を認識しました。

次回はコロナ禍で両社が展開する新サービス・新市場について伺います。

画像2: 訪日外国人旅行者と日本各地をつなぐサービス「WAmazing」を展開
画像3: 訪日外国人旅行者と日本各地をつなぐサービス「WAmazing」を展開

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