VRやARを用いたエンターテインメントの企画・開発・施設運営を行うティフォン株式会社は、廃墟になった洋館や異世界などを舞台にした非日常的な体験を提供しています。創業者であるCEO深澤研さんに、創業の経緯やアプリ事業からアトラクション事業への転換について伺いました。

原体験はディズニーランドでの非日常体験

幼い頃に東京ディズニーランドのお化け屋敷のアトラクション「ホーンテッドマンション」で、別の世界に行ったような気持ちになったことが、深澤さんの原体験となりました。その時の経験はいつまでも自分の中に残っており、「いつか自分の世界観を凝縮したテーマパークを作りたい」という思いをずっと持ち続けていました。

それ以外にも洋館や城といったクラシカルな西洋建築への関心や、現実ではあり得ないような風景に対する憧憬もありました。それらが混じり、エッシャーのだまし絵のような不思議な体験を生み出す仕事をしたいと考えるようになりましたが、普通に就職しても夢を実現するのは難しい。将来の道筋を考えたときに自然と経験を積んでから起業しようという選択になりました。

外資系メーカーにエンジニアとして勤務した後、フリーランスとして独立、アートやデザインを軸足にしたエンジニアとしてグラフィック制作、Webデザインなどの案件に携わりました。変わったところでは、楽器の装飾を手掛けたりもしました。しかし数年間活動してみて、個人の力だけでは夢の実現は難しいと感じるようになり、起業を視野にいったんスタートアップに参画することにしました。そこで得たアプリ開発の経験を基にして2011年11月11日にティフォンを設立し、その後2012年に同僚と独立をしました。2013年にはCG・AR(拡張現実)技術を活用したセルフィ―変身アプリの「ゾンビブース 2」がヒットし、シリーズで4000万ダウンロードを超えています。

投資家からのアドバイスで夢を実現する方向へシフト

起業後、深澤さんにとって2つの大きな転機がありました。一つ目は、「ゾンビブース 2」開発の実績が評価され、ディズニー主催のベンチャー育成プログラムに応募しファイナル10社に選出されたことです。2014年6月に米国法人を設立、ディズニーから出資を受けたのをきっかけにディズニー向けのセルフィ―変身アプリを開発しました。コア技術はゾンビアプリと一緒で、アトラクションのキャラクターに変身できるものです。アメリカでは総合8位になり、テレビに取材されるなど話題になりました。

もう一つの転機は、アプリ事業からアトラクション事業への転換です。ディズニーのアクセラレータープログラムが終了したタイミングで帰国し、国内ベンチャーキャピタルのインキュベイトファンドから出資を受けることになりました。ティフォンの事業計画を説明するときに、自身のバックグラウンドを紹介したところ、「VR(仮想現実)のお化け屋敷をやらないか」と誘われました。もともとティフォンでテーマパークを作りたいという思いがあり、この助言を機に、事業をアプリからエンターテインメント系に転換しました。

初めに手掛けたのは、コリドールという洋館が舞台となったホラーアトラクションです。リアルなお化け屋敷ではできないこととして考えたのが、建物自体が怪物に変形していくという体験でした。当時は現実と仮想世界が混じったMR(複合現実)技術が登場し、マイクロソフトがデバイスとしてHoloLensを発表した頃でした。建物をCGで精緻に作り込み、そこに3DCGを使って建物を生き物のように変形させたら新しくて面白いと思いついたものの技術的に断念し、試行錯誤して最終的にVRデバイスを使ってカメラで撮影した現実の映像とCGの洋館をミックスさせる方法になりました。

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