北大発ベンチャーの株式会社ポーラスター・スペースは、超小型衛星からの観測データとドローンやスマホ分光器から得られるデータを掛け合わせて、宇宙規模のIoT事業を展開しています。代表取締役 三村昌裕さんに現在の事業領域と今後の方向性を伺いました。

独自開発のスマホ分光器やマルチスペクトルカメラ搭載ドローンを活用

リモートセンシング技術を活用して農業分野の課題解決型事業を行うポーラスター・スペースは、独自開発のスマホ分光器やマルチスペクトルカメラ搭載ドローンを活用して高精度のスペクトル計測に基づいた病変の発見、施肥や農薬使用の最適化支援などの農業分野での価値提供を目指しています。

スペクトルデータを活用したリモートセンシングは世界中の農業の現場で使われていますが、スペクトルを観測する分光撮像装置の種類や精度によって、得られる結果に差が出ます。多くの場合、撮像データは4~5バンド(波長)程度なのに対して、同社の装置では北大の技術による世界最多クラスの590バンドの中から最適なバンドを選んで撮像することができます。

また、スペクトル撮像に利用する分光方法には、液晶波長可変フィルター(LCTF)を使用し、液晶にかける電圧を変えるだけで撮像したい波長を瞬時に選ぶことができます。つまり、ずば抜けて高い精度と効率性でスペクトル計測ができ、現場で役立つデータを収集できるのです。

スマホ分光器は近紫外線から近赤外線領域でスペクトル計測ができる安価な分光器をスマホに取り付けたもので、誰でも簡単に操作することができ、スマホの機能を活用することで計測の方位角や位置情報、対象物の写真も付加してネットワークサーバーへ送信し、クラウド上で分析した結果を返します。

また、超小型衛星に搭載しているLCTFカメラをドローンに搭載することにより高度100メートルから100メートル四方を20センチ程度の解像度で自在に高精度のスペクトルデータが得られ、効率的にスペクトルライブラリを構築することが可能となります。

スペクトルライブラリを確立し、宇宙からのオンデマンド観測の実現へ

農業への高精度スペクトルデータ活用は、大規模プランテーション栽培の現場で先行して行う予定ですが、国内においてもスマート農業を推進するために「2025年までに農業の担い手のほぼ全てがデータを活用した農業を実践する」ことが目標とされており、同社では小型軽量で低価格・高性能のスマホ分光器を、稲作を中心に国内農家へ訴求するとともに、2020年度よりドローン計測器の製品化およびサービス化を目指しています。

人工衛星を利用したリモートセンシングは、観測対象を正確に計測するために、衛星の直下しか観測できず、観測範囲の狭さや観測頻度の低さが弱点です。しかし、2018年10月に打ち上げられたフィリピンの第2号超小型衛星「DIWATA-2」には、北海道大学の技術による590バンドのLCTFカメラが搭載され、東北大学による精緻な衛星姿勢制御技術が組み合わさり、通常数週間に1回程度の観測頻度が、数日に1回程度の高頻度での観測を可能にしています。

ポーラスター・スペースは、ロードマップとしてはじめにスマホ分光器やマルチスペクトルカメラ搭載ドローンによる独自計測手法や分析手法を確立し、あらゆる観測条件における農作物のスペクトルライブラリの構築を行うことを目標としています。具体的には、2020年にはバナナプランテーションの計測・分析を本格化していきます。さらに、2021年以降には、宇宙からのオンデマンド観測を目指し、大規模農業における病害状況把握や収量予測など、超小型衛星が活躍する広範囲での高精度スペクトル観測の実現へとつなげていきます。

スマホ一体型分光器、マルチスペクトルカメラ搭載ドローン、LCTFカメラ搭載超小型衛星の3つの異なる視点からのリモートセンシングデータを蓄積しスペクトルライブラリを充実することで課題解決が求められるさまざまな分野にデータソリューションを提供し、リモートセンシングの可能性をさらに広げていきます。

This article is a sponsored article by
''.