CIをリデザインしたジェネシア・ベンチャーズは、言語化だけでなくその伝え方をどうデザインするかにこだわりました。「創業時に抱いていた価値観は大切にしながらも、メンバー一人ひとりの“Will(自己実現のビジョン)”がしっかりと込められた、チームとしてのCIを言語化できた」と代表取締役の田島聡一さんは笑顔で語ります。
新しい社会的価値を生み出す
VCの役割は、「あくまで起業家が掲げるビジョンの実現を支える黒子である」と考える田島さんは、「私たちはあくまで起業家にとっての黒子であるのはもちろんのこと、より「開かれたVC」としての存在でありたい」と語ります。CIを表現する正十二面体の新しいシンボルは、“Be fair to all” というコンセプトの元に、すべての人に対して、公正・公平、そして誠実であり続けたいというメッセージを表すと同時に、「私たち自身が、点を繋ぎ、面を描く、線のような存在であり、点と点の距離が全て等しく、関わるステークホルダー(点)を等しくつなぐ存在でありたい」という思いを表現しています。
キャナルベンチャーズの保科剛は、「田島さんはこれまでとは違う一歩先を行くVCの世界観を考えているように思えます。今回のジェネシア・ベンチャーズのCIのリデザインからもその意思が強く感じられます。チャレンジャーとして、新しい社会的価値を生み出そうとしている気がします」と田島さんに問います。
田島さんは「格差を広げるテクノロジーではなく、すべての人が恩恵を享受できるテクノロジーを生み出すスタートアップを支援し、より豊かな社会の実現を目指したい」と答えます。そのためには大企業や行政をはじめとして、あるべき社会の実現に向かう強い意思を持ったあらゆるステークホルダーと密接に連携し、社会全体をモノとコトとの共存を視野に入れた形で、包括的にデザインし、持続的な形でトランスフォームしていくことが必要となります。
その中のひとつの手段として、デジタルトランスフォーメーションがあります。「デジタルトランスフォーメーションはデジタルディスラプトとは違います。効率化というと、誰かの仕事が失われることに着眼しがちですが、デジタルトランスフォーメーションは、適正な役務の提供価値と得られる利潤のバランスを最適化することで、持続的な形に向かうプロセスだと私たちは考えています」と語ります。
明確な目的と強い意思を持ったCVC、VCが選ばれる
独立系ベンチャーキャピタル(VC)だけでなく、大企業や大企業のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)によるスタートアップへの投資も多くなっています。CVCが増えることにより、リスクマネーの循環量が増加することはとてもよいことですが、その増加トレンドを持続的なものに出来るかどうかは、CVCがその目的をどう捉えているかに依存すると考えています。
CVCを立ち上げる目的は、あくまでも自社の進化プロセスにおけるスタートアップとの協業手段に過ぎないと考えています。自社のあるべき姿と現状のギャップが可視化されていないと、CVCの役割が明確化されないだけでなく、起業家から見ても魅力的な株主には映りません。優秀な起業家であればあるほど、相手が明確な目的と強い意思を持つ、一緒に成長できる相手かどうかを重視します。
だから、明確な目的と強い意思を持ったCVCを増やすことが、リスクマネーの持続的な増加に繋がり、結果として日本のベンチャーエコシステムをより強いものにしていきます。「キャナルベンチャーズのように、明確な目的と強い意思を持ったCVCを増やしていきたいと思います」と田島さん。
ビジネス経験の豊富な起業家は、当然ながらVCに対してお金以外の提供価値を求めてきます。つまり、「VCが起業家に選別されるポジションにいるので、VCは起業家のパートナーとして選んでもらえるように、成長し続けていかないといけない」と語ります。