2019年7月23日(火)、「第1回官民交流 Digital Transformation Meetup」が、キャナルベンチャーズの主催で開催されました。スタートアップにとっては、自社の成長戦略に向けて政策企画担当者とのチャネルづくり、政策企画担当者にとっては、政策実現に向けて必要となる具体的なビジネスニーズ、技術シーズや知財ホルダーとの人脈づくりの場となります。
社会課題解決にも貢献するスタートアップと国の政策企画担当者の交流を橋渡し
Origamiと三井住友フィナンシャルグループの協力で開催された会の参加者は20名を超え、懇親会+ネットワーキングまでの盛りだくさんの内容となりました。イベント冒頭、三井住友フィナンシャルグループの古川剛也さんより、会場となった同グループのオープンイノベーション拠点hoops link tokyoの説明が行われました。
次いで、キャナルベンチャーズ代表取締役の保科剛より、「デジタル前提社会の到来により、世界的規模で産業構造・社会構造の再構築が進みつつあります。今後日本が国際競争力を維持し続けるためには、これまでの常識・産業・国境にとらわれないビジョン(政策)と、より優れた技術をより多く輩出する場が必要といえます。キャナルベンチャーズは、先進的な技術をもつスタートアップと国の政策企画担当者の交流を橋渡しすることで、これからの日本のデジタルトランスフォーメーションの促進に寄与していきたいと考えています」という会の趣旨が説明されました。
第1回目の今回は、最近話題になっている「外国人就労者」をテーマに、官民交流の促進を図る場となりました。スタートアップピッチとパネルディスカッションに先立って、最新の成長戦略の概要と外国人材の活躍推進策の解説が行われました。
官民コンサルテーションで変えていきたい
Origami取締役 社長室ディレクターの桑原智隆さんから「日本の成長戦略」について概要解説がありました。2019年6月21日に閣議決定された「成長戦略」は、(1)Society5.0の実現、(2)全世代型社会保障への改革、(3)人口減少下での地方施策の強化の3本柱となっています。
(1)G20でDFFT(データ・フリー・フロー・ウィズ・トラスト)の重要性が強調されました。フィンテック、モビリティ、コーポレート・ガバナンス、スマート公共サービス、次世代インフラ、脱炭素社会の実現など、重要な戦略分野が並んでいます。VCも含むイノベーション・エコシステムの構築は、Society5.0実現の民間の担い手づくりや、イノベーションの社会実装を通じ、人々の生活に関係します。
(2)全世代型社会保障への改革では、人生100年時代を見据えた70歳までの就業機会の確保に向けた法制度が整えられます。兼業、副業、ギグエコノミーやアラカルト雇用など、いろいろな言い方がありますが、多様で柔軟な働き方を拡大します。また、次世代ヘルスケアシステムの構築などがあります。
(3)地域の暮らしを支えるインフラを維持するため、独占禁止法の特例法制を設け、人口減少下での乗合バスや地域銀行等のサービス維持を図ります。
イノベーション・エコシステムの主役であるスタートアップやVCこそ、成長戦略を自分ごととして見ていただきたい。官民コンサルテーションで変えていくために、垣根を下げて捉えていただけたらと思います。「今日集まったスタートアップと政策担当者との交流は、今後のビジネス応援、ビジョン実現のための具体的なアクションとしてつなげていきたい」と語りました。
専門職が不足する中で高度外国人材の活用・定着が急務
次いで、経済産業省経済産業政策局 産業人材政策室長の能村幸輝さんより、外国人就労関連に関する解説が行われました。
外国人労働者は過去最多の146万人(2018年10月末現在)で、毎年20万人のペースで増加しています。多くの在留資格があり、制度の簡素化が必要なことから永住権を取得しやすい制度を整えてきました。2017年創設の「日本版高度外国人グリーンカード」では、高度人材ポイントの評価が受けやすくなり、永住許可申請に要する在留期間が最速で1年に短縮されました。
しかし、これによって高度人材が日本に来てくれているかというと、政府の数値目標は達成していますが、ビジネスの現場でのフィット感とのギャップがあります。手続きの簡素化だけでなく、日本企業の人材マネジメントの問題も含めてアップデートしないと定着し、活躍することは難しいと思います。
留学生の就職状況を見ると、外国人材の採用・定着には、キャリアパスの明示、役割・業務内容の明確化など、さまざまな課題があります。そのために、経産省、文科省、厚労省などが集まって、採用・育成・定着に関するベストプラクティスを横展開していきながら、外国人留学生の就職チャネルの多様化に取り組んでいます。
外国人起業家に対して「特定活動」の在留資格として、最長1年間の準備期間が認められています。その後に、「経営・管理」という在留資格を取得するには、要件が厳しいという声が多い。外国人が起業しやすいようにしていきたいので、いろいろなアイデアをいただきたい。また、高度外国人材活躍推進プラットフォームとして、JETROが事務局になって、企業と高度外国人材との出会いの機会・情報を提供しています。企業情報などを掲載し、外国人留学生がアクセスできるプラットフォームを充実させていきますので、ぜひ活用していただきたい。
4月からの新たな在留制度「特定技能」で34万人をこれから5年間に受け入れることになります。みなさんからのニーズに合わせて、連携しながら対応していきたいと考えています。