大垣共立銀行(OKB)は、スタートアップへの融資や提携などで知られる先進的な金融機関。そのOKB執行役員IT統轄部長の安田次朗さんに、スタートアップへの支援や地域企業への紹介について、その具体的な方法を聞きました。

地域企業のメリット

「なぜスタートアップを地域企業に紹介するのか」とよく聞かれますが、それは地域の活性化が地銀の仕事だからです。例えば、大手企業の場合、自社がアクションを起こせば、必ず取引先からサービスの提案があります。一方、地方の中小企業は、アクションを起こす方法を知らず、つながる方法を持たないケースが多いのです。また、情報を得るにも情報誌や新聞などの紙に頼るのが現状です。

OKBのような地域銀行は「そこに何かできるのではないか?」と思っています。例えば、キャッシュレスでは「QR決済ってなんだ」というところから始まり「それがどういう仕組みで、どうやって導入していくか」までを丁寧に提案できます。

また、当行のお客様の大半が中小・零細なのですが、この方たちがスタートアップの商品にマッチしやすいのです。大手企業が作るサービスは、高価であることが多いのに比べ、スタートアップのサービスはイニシャルコストがゼロに近い、操作が簡単というケースが多く、試してみて活用の道を探るという意味では非常に優れています。

スタートアップのメリット

一方のスタートアップ側は、直接地方の小売店や企業を訪ねても「知らない会社だから」とまずシャットアウトされてしまいます。そこに地銀の担当者が入り、サービスを紹介すれば、話を聞いてもらえるチャンスが大幅に広がります。当然、スタートアップはリソースが限られていて、自分たちでは営業ができないという事情があります。得意なウェブ上でセールスしても、そのサービスを必要とする利用者に見てもらえない可能性も高いのです。

また、ウェブ上で、サービスの一部を無料で提供している会社は、流入はあるのですが、試用から有料課金に至ることが少ない。ユーザーは「とりあえず無料だから入ってみた」というのが本心で、もうワンクッション営業による説明なり、納得する内容なりが入らなければ契約までにいたらないケースも多いようです。

銀行がセールスすることで、これらの課題を解決し、スタートアップはサービスやシステムの改善に特化するといった上手な分業にもつながります。

視点をそろえる

これはあくまで、一般的な見解ですが、すでにデジタル世界で生きているスタートアップの常識と、チマタの常識というのは、やはりちょっと違うところがあって、その視点を繋ぐのも銀行の仕事ではないかと思っています。

視点という意味で面白いのは、スタートアップは紙媒体をあまり使わないという事情があります。スタートアップの皆さんに聞くと、ほぼウェブで完結させていて、紙のカタログやチラシは作ったことないという会社が多いのです。地銀の立場から言うと、紙媒体はそのサービスに「どのような魅力があるのか」を落とし込んだもので、「紙がないとなかなか浸透していかない」というのが常識なのです。訪問先の経営者は60~70代の高齢の方もおり、ウェブですべて解決してくれ、というのはいささか難しい。中小企業の場合、意思決定は社長になりますから、そこに届かないと意味がないのです。

カタログを見て、そのお客様から新たな課題をいただくということもあります。また、これまで当行と取引のなかった会社でも、紙のカタログがフックになって取引が始まるという事例もあるので、そんな現場のノウハウも共有していければと思います。

銀行はさまざまな顧客と接点を持っているので、それぞれの企業の課題に気付いていることが多いのです。その課題から新たな産業が生まれるのだと私は思っています。スタートアップは、この課題解決をビジネスにしていますが「その課題は、本当にターゲットの課題と合っているのか?」という命題は、銀行に聞けば正しい解答にたどり着きやすいのではないでしょうか。

当行グループには、比較的大きな規模のコンピュータ会社やシンクタンクがあり、それらとチームを組みながら、計画の策定やフォローアップも含めた事業を進めています。クロージングは、スタートアップがインサイドセールスで行う場合もありますが、彼らがセールスに慣れていないケースでは、当行の担当者を介して紹介していきます。

ビジネスの掛け合わせに!

逆に私たちもスタートアップの方にお会いして、今までにない刺激をいただいています。今は本当に可能性が多くある、変わろうとしている時代で、当行にも多くのチャンスがありチャレンジして行ける時だと思うのです。当行の頭取は「変革の時に座っているだけでは衰退しかない」と言っており、私は自由に動かせてもらっています。スタートアップの方にはぜひ気軽に声をかけていただきたいです。すぐに伺います。

銀行は現状の業務だけを見れば苦しい状態です。だから自分たちからビジネスを創る・作ることを求められています。しかし図体が大きく機動力が足りない面があり、身の軽いスタートアップと一緒になってビジネスを考えていくことも必要となってきています。

金融だけでなく「ビジネス×ビジネス」といった感じで、ビジネスを掛け合わせ、ぶつけ合い、新たなものを創り・作り出していけるという希望も持っています。ビジネスの種はスタートアップが創り、我々と一緒に育てていく、そんな関係づくりをしていければ面白いですね。

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