胆力と未来志向

オイシックスドット大地 奥谷さんとキャナルベンチャーズ(CV)保科のパワーブレックファスト。良品計画が日本ユニシスのシステムを導入した際に接点ができたふたり。その後、奥谷さんはスタートアップの中に入り、保科はスタートアップに投資するという形で支援する立場となりました。
 
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奥谷さんが2015年に転職したオイシックス(当時の社名)は、約200名の規模でした。入社の動機のひとつが、スタートアップで無印良品の経験をいかしたいと考えたためです。その後、会社の合併が進み、オイシックスドット大地はもはやスタートアップとは言い難い600名規模の企業になったと感慨深く話します。
 
BtoB向けのスタートアップを後押しするキャナルベンチャーズの役割を説明すると、奥谷さんはオイシックスドット大地にも「フードテックファンド」という投資部門があると紹介します。
 
スタートアップの経営者の胆力には驚かされる、という奥谷さん。サラリーマンの場合、ビジネスで少額の赤字、小さな失敗も懸命に排除し、結果何もしないという傾向があります。明日仕事がなくなるわけでもないのに、上司や経営陣から失敗の烙印を押されることに怯えています。
 
ところがスタートアップの経営者は億単位の赤字を出しても動じず、むしろ追加で何億円も入れていこうとしている話を聞き、彼らのほうがよほどリスクを犯している、しかし、彼らは常に未来志向で、現実の厳しい現状に向きあいつつも、引っ張られることなく、さらなる挑戦を続けている。そのようなメンタリティと決断力に自分のほうがむしろドキドキしたと話します。与えられた環境で挑戦するだけなのに、失敗を極度に恐れて何もできない
 
サラリーマンのジレンマと、赤字のままでもサービスとして圧倒的に広げ、胆力と未来思考で、トータルでプラスにするまで頑張り抜くというスタートアップのマインドの違いを改めて認識したといいます。
 
また、起業について日本人は考え過ぎるのではないか、と奥谷さんは指摘します。「起業するからにはAmazon Goみたいなのをつくらないといけない」「若い人は見たことのないようなサービスを生む」と思いがちです。もっと気軽にミドルの男性・女性、そしてシニアも起業し、そのビジネスを応援するという環境が増えていくことに期待します。
 
昨今のベンチャー・キャピタルは、BtoC企業への投資をしていたところが、BtoBの投資をしているところも多い。このため、企業で経験を積んだシニアが大企業とスタートアップの間に入ってつなぐ、というニーズも増えていくでしょう。

Amazon Go

パワーブレックファストを行なった前の週、シアトルのAmazon Goを視察してきた奥谷さん。保科は特に流通・小売の立場からどのように見えたのか、という質問をなげかけました。
 
奥谷さんが注目したのは「Amazon Goに膨大な情報がとられている」ということ。
 
Amazon GOで買物体験をした多くの人は、買物体験の仕組みの理解に意識が向かう。一度3個手に持った後、ひとつ減らしても、ちゃんとレジで反映されたかなど。本当にすごい点はそこではない、と奥谷さんは指摘します。
 
いたるところにカメラやセンサーが設置され、人が入ると次々に個体認識を行い、やその動きを認識して情報を蓄積していきます。正直無駄な情報もたくさんたまっていきます。けれども、それをひたすら続けているのがAmazon Goだといいます。
  
リアルの店舗で商売をしている人は、実際の店舗に勝る買い物体験はないと考えています。Amazon Goはその逆です。「ネットの素晴らしい買い物体験をリアルで実現」しようとしています。Webの中を泳ぐような買い物体験なのです。
  
Amazon Goという小さな店に投資しているヒト・モノ・カネが桁外れだと語る奥谷さん。例えば、日本でコンビニが同様のお店を全国展開しようとしたら莫大な費用がかかり過ぎて現実的ではありません。しかし、このような小さな店舗にくるお客様一人一人のもたらす購買データ以上の行動データを獲得し、理解するという壮大なる挑戦は、次世代のHyper Big data、 Hyper Cloudサービスを見据えているアマゾンだからこそできる、今誰も知らない買物行動の未来への挑戦なのかもしれません。

ミールキット

アメリカで増えているミールキット。オイシックスのミールキットも順調に売り上げを伸ばしている、と奥谷さん。特にネットのほうが出来上がりの写真を見て、スムーズに購入しやすいといいます。一方、リアルな店舗の店頭の場合、そのまま置いてあるだけでは、横にならぶ野菜や肉との差別化が難しい。そこで料理の写真を置く、社食で販売する、キッチンカーで売るなど、展示や販売方法の工夫を重ねています。
  
オイシックスのミールキットは「20分」で夕飯を作ることができます。これより短すぎると料理を作っているという自己効用感がわかず、40分以上になると普通の料理を作っているのと変わりません。
 
この絶妙な時間で、自分で考えると偏りがちなメニューが広がり、効率よく料理を作ることができるのです。
  
ただし、20分はもともと狙っていた時間ではなかったといいます。野菜は切ってしまうと痛みます。それを防ごうとすると保存のための添加物を加えないといけません。ミールキットの開発をしていく中で、それを避けた結果、20分という時間に落ち着きました。現在は夕食のシーンにおける時短ニーズの取り込みに注力してますが、最近では手間暇のかかる梅酒キットや、手作り味噌キットも好評です。朝食シーンのミールキット開発検討も進んでいます。
 
「今日何作ろう」ではなく、「今日何食べよう」という、日々のお料理を前向きで楽しくなる提案をしていきたい、と奥谷さんはミールキットにこめた思いを語りました。

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